＜センターの話＞
現在パンのGood Shephered Sistersでは、25人の少女が裁縫を学んでいる。彼女らのほとんどは、作業場の上に寝止まりしている。作業場の2階にある泊まり場は、2段ベッドがずらりと並んでいる。少女たちのプライベートな場所はベット分しかない（一番上の写 真）。

　彼女達は、平日はここに寝泊まりし、週末は実家に帰る、という生活をしている。しかし、家に帰れない女の子や、帰りたくない女の子がいる。それは、家に帰る事に危険が伴うからだ。家のある地域が売春がはびこっていたり、親がけんかを繰り返していたり、虐待を受けるかもしれないという危険があるのだ。


　自分の居場所があって、必要としてくれる人がいるということは、なんと人を支えるものなのだろうか。センターには、自分のことを本当に心配してくれるシスターがいて、ちゃんと食事もできて、話をする同年代の女の子たちもいる。彼女達の居場所が今はあるのだ。

　成長し、自我が形成される過程で、常に誰かに必要とされているという意識がなく、売春や虐待、そして将来への不安を抱えながら生きてきた子供は、自分を認めることができるのか。そして自分の進む途を自分で探していけるのだろうか。

＜センターを卒業したら…＞

　センターを卒業した生徒の数は、シスターも分からないほどになっている。センターを卒業する、ということは、少女達にとって、次の自分の居場所を探すということであり、自分の生き方を考えるということでもある。

　これは、シスターが頭を悩ましていることである。しかるべき技術を身につけて、バンコクへ出稼ぎに行っても、仕事がない。というよりは、仕事を見つけることができない。パンなどの北部よりも絶対数として仕事は多いはずであるが、 少女達は自分自身のことを決断することができないために仕事を得ることができないという。

　 大人として扱われる年齢になっても、彼女たちは、自分が何をしたいのか、何をすべきなのかが分からず、将来のビジョンを描くことができない。

　私はシスターに、「彼女達に望むことは何ですか？」と聞いた。 すると、「一つは、より高い教育を受けてほしい。彼女達は、自分の足で立って、自分の路を自分で切り開く力をつける必要がある。だけど今はその力が足りない。もう一つは、もっと沢山の経験を積んでから結婚をしてほしい。この地域では平均で12歳から13歳で結婚するわ。職業もなければ、家に居場所もない、そんな女の子が大勢いる。だから結婚するしかない。問題は、貧困であり、教育不足であり、さまざまな慣習であり… 複雑に絡み合った問題がさらに状況を悪化させているのです。」

　技術を手に入れてバンコクに出稼ぎに行っても、一人ではどうしたらいいかわからない。村に帰ってきたら、売春婦になるしかない。行き場のない大勢の少女は、今も将来に不安を抱えながら生きている。