タイ報告

タイ通信その2

2003年3月15日

14時間の夜行バスとその後のチェンライ現地視察を経て、13日にバンコクに戻ってきました。今日14日はバンコクでのんびり、という予定だったのですが、月末締め切りの原稿手直しに四苦八苦してたバタです。明日はロブリーのＮＧＯ関係者と打ち合わせをしてから、夜中の飛行機で帰国予定｡最後の最後までハードなスケジュールが続きます。明日朝6時半出発なので、あまり長くは書けませんが、今日はタイ通信その２、と題してお送りしたいと思います｡題して、「入口と出口」！

＜入口＞
バンコクの繁華街を歩いていて気づくのは、外国人男性とタイ人女性のカップルと思しき人々。しかもそれはホテルのロビーでもよく見かける。もちろん、純粋にカップルの間柄の人も当然多くいるでしょう。でも、そうではない「怪しいカップル」もまた、このバンコクでは見かけるのです。その男性の目的とは・・・、そう、受験生の青年諸氏には生々しい話ですが、PROSTITUTEそのものなのです。

バンコク最大の繁華街パッポン通りに限らず、われわれのホテルの近くにだって、派手に着飾ったタイ女性が通りの観光客に声をかけるバーや、もっといえば上半身裸の女性が踊っていて、その女性を連れ出すことが出来る「ゴーゴーバー｣と呼ばれるような風俗店が、夜になるとかなりの歓声を挙げて繁盛しています。血気盛んな男性諸氏は、国籍や年齢に違わず、そういった怪しい地帯に足を運び、そこで品定めをし、場合によっては「商品」を金銭を支払ってお持ち帰りするのです。

それだけを書けば、某三流週刊誌のような下世話記事に終わってしまいます。しかし、われわれは今回の視察を通して、その出口を既に垣間見たのでした。それは･･･

＜出口＞
ノンカイの滞在中に訪れたある村で、ガリガリで骨だけの男性にあう機会がありました。あるいは、別の村では、昨年のクリスマスの写真はふっくらしているのに、3ヶ月後の今ではやはりガリガリになってしまった女性。違う村では、体中に疱瘡が出来ている少年。彼らに共通しているのは、エイズ感染者という事実です。

そう、タイはアジアで有数のエイズ感染者の多い国でもあるのです。そして、その感染者の大半が、売春などの性産業従事者を通じての感染や、その感染者の配偶者、あるいは子どもなのです。

入口の喧騒や妖艶さだけを見ていると、ついついフラフラしてしまう諸氏もいるかもしれませんが、出口を知っていると、まったく違った風に見えてきます。そう、タイの性産業従事者の女性の多くは、貧しさゆえの、そして福祉が貧困なゆえの、労働者なのです。

＜扉の背景＞
タイのバンコクではマクドナルドもスターバックスもミシェルクランも8番ラーメンもあります。何だって、お金を出せば買えます。マクドナルドのバリューセットは50バーツ（150円）そこそこあれば買えます。これは、日本の物価からすればやすいものかもしれません。でも、一日70バーツの収入しかないタイの貧困層からすれば、とてつもなく高い金額。しかも、それを平気で食べている子どももいる現状･･･｡

このような国内格差が生じるなかで、貧しい地域の、しかも小作農で現金収入が少なく、さらに子沢山な親は、時として、借金返済の変わりに、あるいは現金収入を求めて、自分の娘を売春組織に売り渡すのです。そして、純朴な少女たちは、親の意見に逆らう程の知識もなく、あるいは有無も言えないうちに、親の言いなりに売春産業に入り込みます。

でも、もともとは純朴な彼女たちが、そう簡単に人の前で声をかけたり、裸になったり出来ません。すると、そのうちのあるものは、恥ずかしさを消す為にアルコールや麻薬に頼ります。また、それらに頼らなくとも、お客の前でコンドームをつけて、とも言い出せない子達もいるのです。そして、アルコール中毒や麻薬中毒、あるいは注射針や性交渉によるエイズ感染、などさまざまな危険が待ち構えているのです。

最初は数年働いて、大金を持って故郷に錦を飾るつもりでいた彼女らも、アルコールや麻薬や、あるいは着飾る為の服装を買う為に収入の大半を使い果たし、多くの人々が、大金でははなくエイズという病を抱えて、故郷に戻り、死に直面することになるのです。まさに、悪循環、なのです。

この悪循環の問題、あるいは前回書いた福祉の問題、などについては、今日は時間切れなので、また次回に書き続けたいと思います。今は現地時間午前0時を回ったところ。あと5時間後には起きて用意しなければならないので、今日はこのへんで。

SUPERVISOR; M.Tahira H.Takebata /Photographers; BATA, Y.Eriko/ Writer and Designer; Eriko Yamashita
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