パンは、チェンライから車で1時間ほど南に位置する。少数民族の美人が多いと言われているこの地域は、性産業の格好のターゲットとなっている。

　この地域は、家族の収入はとても低く、1日働いて稼いだお金は1日で消費してしまう。生活費のみに消費される収入は、貯蓄しようがない。しかも、都市部の急激な発展につられて、パン事体の経済水準はそれに追い付いていないにもかかわらず、価値観や欲求だけが先走りして消費社会へ移行しようとしている。

　家庭に様々な電化製品が登場し、テレビを手に入れることが一種のステータスになり、人々はそれを手にいれたくなる。日本でも戦後にテレビなどは３種の神器などと言われたが、生活をさしおいてテレビを手に入れようとする家は少なかったのではないだろうか。しかし、パンの場合は、テレビが欲しい家庭は家の生活が苦しくても、テレビを買うために銀行からお金を借りる。テレビを手に入れた家庭はテレビに依存するため、放送されるものがさらに欲しくなる。際限のない欲求によって、再び銀行でお金を借りる、ということを繰り返す。 はっきりした数字ではないが、そうして借金を繰りかえして電化製品を買う家庭は半分を超えると言われた。

　このような繰り返しによって身動きができなくなった親は、出稼ぎという名で娘を売ったり、生活を子供に頼るようになる。 そのため、多くの子供は学校に行く余裕さえなく、自ら働いて家計を支える。

　シスターは、多くの親は無責任だ、と語った。 今でも北部には、一夫多妻制の慣習があり、2,3人の妻を持つ男の人は当然のごとく存在する。そして１人の男親に対して多くの子供が産まれるため、一人一人の子供に十分な生活も教育も与えられない。

　 親の方も十分な教育を受けていないため、子供をどうやって育てていけばいいか、を理解していない。 そのため、親たちは子供をしかりつけるのみだ。